消えた風物詩

小学5年の12月のある日の夜、
塾の帰りにある住宅街を通るのだが、
そこで通り全体がイルミネーションされてキラキラ輝いているのを見た。
そのとき、子供ながらに感動した。
その通りは無人で人っ子一人歩いてもいなかったので、
まるで自分ひとりだけがここの存在を知っているかのように思えた。


それから毎年12月になると、その通りはイルミネーションで飾られるようになった。
中学校時代にも同じ塾に通っていたので、
その帰りに楽しみながらそこを通った。
相変わらず、人はほとんど通らなかった。


それから何年かして僕が大学1年のとき、
地元の情報誌にだれかがそこの通りのことを投書した。
「すごくきれいで感動しました」と。
それからしばらくすると、
今までほとんど人が通るのを見たことがなかったそこの通りに
人が大勢来るようになった。
遠くから車で来る人まで出てきた。


それから3年後の去年、イルミネーションはなくなった。
あまりに多くの人や車が来るので、その通りは大渋滞し騒音がひどかったせいだそうだ。


もしかすると今年はやっているかも、と思って行ってみたが、
やはり真っ暗な通りのままだった。


昔はそのイルミネーションを見て「あぁもう12月か。今年ももうすぐ終わりやな」と思ったりもしてたけど、
なくなるとやはり寂しい。